元高級料亭のアルバイトを4年間経験した私が教えるおもてなしとは

大学生の頃は接客業のアルバイトをしていました。

当時のバイト先の接客のクオリティはどこのお店にも優ると自負していましたので、

その裏側を回想してお伝えします!

 

19歳の時にアルバイト採用をして頂いたのは

人形町今半 名古屋ミッドランドスクエア店

です。

こちらで濃厚で貴重な4年間を経験しました。

 

土日祝日、元旦を除く正月を全て楽しかったアルバイトに捧げ、お祭りやイベントよりバイトを優先していました。

他のアルバイトもしたかったけど(MCとかスタバの店員さんやりたかった)土日出勤マストなものが多くて諦めました。

理由は、早く重宝される人員になりたかったから。

ただのお運びさんから、真のおもてなしを体得するまで私には時間がかかりました。

一緒に働く方は一回りも二回りも程歳が離れている方が多かった為、

会話に困らないよう、マナーや料理に関する本を沢山読んで勉強しました。

あとは日々ジャンル問わず、お店を巡っては

また来たい!と思えるお店づくりについて探求しました。

 

さて、

うちのお店は有名企業の方々に接待で利用していただけるお店でしたが、

特に日曜日はハレの日の利用が多く還暦やお食い初め、顔合わせのお席での予約が早々に埋まるお店でした。

結婚記念日やプロポーズに使って頂いたことも多数ありました。

 

個室が6室、広間に4テーブルというレイアウトでした。

41階という高層のため、窓のあるお部屋とテーブル席からは名古屋駅が一望できます。

基本的に各テーブルに1人担当がついてオペレーションを行います。

最後まで担当として全うするという意味と、人員が度々変わるのはお客様にとって良くないという理由でした。

接客業あるあるですが、うちのお店では全てにマニュアルがありました。

箸置きと箸、コースター、ナフキンの置く位置が決まっていて、

適当に置いたものは見たらわかるのでやり直しになります。

向きがあるものはお客様から見て正しい向きで置くことは当然で、

お客様の目につかないところまでのルールが決まっていて、全てが整然とした店内でした。

 

今でもたまに訪れますが、

何年経っても変わらないけど少しずつ朽ちていくその状態を見るたびに、侘び寂びを感じます。

 

着付けから始まるこの仕事に通ずるものは、和の心得。

着物や和室、焼物、お料理、所作

和の文化には全てに意味があります。

箸の持ち方や、襖の開け方など細かい動作一つひとつに意味があって

美しさを成します。

時には部屋の掛け軸や、毎週変わる生花についての質問をされたり

毎月変わる前菜の詩や器についてお客様から質問を受けましたが、

いつ何を聞かれても答えられるように調べることと、

プラスαの情報を提供すると喜んでいただけます。

 

第一印象は大事で、玄関には必ず一人門番がいました。

入り口で門番が待っててくれることでお客様は客として迎え入れてくれてる、という安心感を持ちます。

門番の役目も重要で、ご予約のお名前を聞かなくても

恐らくこのグループだろうな、とかこのカップルかな、とかを

身なりやカップルの距離感などで推測したり

食事のスピードが早そうかゆっくり過ごしたいのかを見極めるのが一番最初に行うことです。

 

まずはファーストドリンクから、すき焼きまでのオペレーションを

いかにお客様にとってスムーズに行うかが重要でした。

アルコールを楽しみたい方も居るので、急かさず遅すぎず

飲むペースを掴んでグラスが空く前に(呼び出しをされる前に)

お伺いしたり提案をしに行きます。

個室の場合は耳を澄ませるくらい中のご様子には注意しますが

新鮮なカップルの場合はあまり邪魔をしない程度に、

御用があれば呼び鈴を押して下さいくらいに控えめに出る加減も重要。

 

いつどこの部屋のお客様がお化粧室に立たれるかわからないので、

全員が厨房や客室に入りきらないようにしていて、

お化粧室からお戻りになるまでご案内するのが原則でした。

 

 

すき焼き屋さんなので、

メインイベントは鍋。

すきザクをお持ちする時が、私もお客様もこれからすき焼きが始まるんだというワクワクの瞬間。

割下をひいて、最初の一枚を焼く時が私もお客様もドキドキする時。

鍋の締めに、卵とじを作って

通称ふわたまご飯を提供します。

お客様の目の前で調理をするというのは、味付けはさながら

お腹の満たされ具合をも察知できる面白い仕事でした。

 

 

マニュアルに従うだけでは誰も喜びません。

お客様に言われるよりも先に気づいて推測して動いたり、

お客様の層やシチュエーションに合わせたコミュニケーションを取ったり

全てお客様のタイミングと心にフィットするように

日々、察する力をアップデートしていく事が求められます。

 

お祝いの席が多い事もあり、地下のモンシェールさんでケーキを調達したり、

お客様のお遣いでコンビニに行く事もありました。

こういうのはサービスの一環に過ぎませんが、

ホスピタリティとは、

お客様にどうしたら満足してもらえるのかを考え表現する事に尽きます。

 

ちなみにホスピタリティとおもてなしとは、

同義語で使われる事が多いのですが、

日本語の意味は奥深いので、何となく違うという事に気づいていただきたいです。

おもてなす、という心はこちらが、私が主体性を持って心をこめることに加え、お互いを大切にしたり敬ったりする意味も含まれます。

ホスピタリティとは、お客様や相手にとって優しさや慈しみを与えること。少し度合いや関係性が異なります。

 

肉体労働の中でおもてなしを学びましたが、

日常に活かせる事は沢山あります。

手土産やプレゼントを考えることもおもてなしの一部かなと。

 

今の会社に入ってからは毎年ブランド研修がありますが、

2年目の研修時に、阿部 佳さんという方の仕事の流儀を見て、感銘を受けました。

彼女は元ホテルコンシェルジュで、お客様からの要望に決してNOとは言わずどうしたら満足して差し上げれるかを追求した、

お客様の心を読み解くプロフェッショナルです。

わたしはコンシェルジュ

ホスピタリティがわかる一冊です。是非読んでみてください。

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